もらとりあむタマ子
★★★★☆
監督:山本敦弘 脚本:向井康介
「リンダ リンダ リンダ」「マイ・バック・ページ」の山下敦弘監督が、「苦役列車」に続いて前田敦子をヒロインに迎え、久々に盟友・向井康介とのオリジナル脚本で描くダメ女コメディ。大学を卒業後、就職もせずに帰省した実家でダラダラと過ごすぐうたら女子が、周囲の人々と織り成すダメダメな日常を、秋から夏までの1年の季節の変化とともにユーモラスに綴る。共演は康すおん、鈴木慶一、富田靖子。秋。東京の大学を卒業したものの、就職もせず、父・善次が一人で暮らす甲府の実家へ戻ってきたタマ子。家業のスポーツ用品店を手伝うでもなく、ただゴロゴロと暇を持て余しては、時折、世間に毒突いて口だけ番長ぶりを発揮するだけのあまりにも残念な日々を送るタマ子だったが…。<allcinema>
『マイ・バック・ページ』、『苦役列車』の山本敦弘が、元AKB48の前田敦子を主演に新作を撮った。厳密には「映画」として作ったのは夏編だけである。その夏編が秋冬春に比べ、空間の広がりが増している。
『クロユリ団地』に出演していたことは忘れ、『もしドラ』ぶりの主演を務めた前田敦子。ぶっちゃけ、前田敦子は元AKB前田敦子でしかないのだけれども、今回は「元AKB前田敦子」というのが、生活感丸出し、家事手伝いすらしないタマ子を見事に演じ切るための良いスパイスになっている。お見事なキャスティングだ。日本アカデミー賞優秀主演女優賞も固いかもしれない。某ゴシップネタを思わせるショットがいくつか存在しているので注目。
作風はグダグダではなく、ダラダラ。
セリフ選びが絶妙なため、ダラダラさの中にメリハリが生まれている。
「少なくとも、今ではない!」は勿論のこと、「トイレ!」、「恋に部活に忙しい、誰かと違って」、「自然消滅なんて久々に聞いた」などのセリフが頭に残る。中でも顎をしゃくらせての「トイレ!」は最高です。
食事シーンも、ゴーヤチャンプルさえもが美味しく見える作りになっている。これらの要素がなければ78分ですら長く感じてしまっていたかも。
小道具にもこだわりを感じられた。特に感じたものは自転車であり、カゴが錆びていて「高校時代ぶりに乗っています」という感じが実に良かった。中学生の自転車のハンドルがちょと上がっているのもオモシロイ。
『もらとりあむタマ子』、ぜひ劇場で。
@新宿武蔵野館1