2014年6月新作鑑賞
A(2014年ベスト候補)、B(良)、C(並)、D(残念)、E(2014年ワースト候補)
■B
『グランド・ブダペスト・ホテル』★★★★☆
洗練された画面構成に大興奮。これがウェス・アンダーソンの「世界」なのか。
カラフルな色調から一転、ラストには白黒映像が待っている。この白黒映像による魅せ方だけは不満。
カラー→モノクロによってメリハリが出るのならまだしも、ただの白黒映像なだけだったのが勿体無い。映像比の変更による魅せ方は最高。
前作の『ムーンライズ・キングダム』のつまらなさはなんだったのかと悩んでしまう程、今作の洗練具合には驚かされた。
今作が映画史に残る一本かと問われた時、その答えはNOだと考えている。
『ゴジラ 60周年記念 デジタルリマスター版』★★★★☆
4Kスキャンニングによってここまで綺麗になるんだと感動し、今作における「ゴジラ」が持つ「恐怖」というものをスクリーンで見たことで初めて体感できた。
熱狂するほどの楽しさは未だに見出だせずにいるが、高画質に感動してしまい、クライテリオン版の『ゴジラ』を購入してしまった。
『私の男』★★★★
シネスコ画面に映される北海道の流氷が最高に美しく、恐ろしい。
流氷ロケでのシーンはどれも印象強く残るし、何よりも「北海道」を撮らせたら右に出るものはいないのではないかとさえ考えてしまう。
相変わらず画面の窮屈さと臭いは健在だった。今回はそれも良く感じてしまった。
今作はシコリとなって残る、そんな感じ。年末にはベストになっているかもしれないし、ワーストになっているかもしれない。
『美しい絵の崩壊』★★★★
二人の少女が大人の女性に、二人の少年が青年に、その変遷をそれぞれひとつのシーン内で魅せられた時点で満足。
ロビン・ライトがサングラスを外してすぐに付け直すのヤヴァイ。老いた目元を隠すためなのか、既に元愛人を直視できなっているのか分からないけど、ヤヴァかった。
親友である二人がレズビアンだという考えで見ると、互いの息子と関係を持つという行為に、息子の中にある親友の部分を確かめているかのように思えてくる。しかしそうではなく、純粋に愛し合うが故に崩壊が待ち受けている。
ラストは損傷してしまった絵画を補修したかのように元の関係に戻っているように思えるが、それは補修したのであって絵画を描き上げた状態ではないのだろう。
『観相師』★★★★
前半のコメディ調は苦手だったけど、後半の盛り返しっぷりは最高の一言。
イ・ジョンジェの役どころが絶妙すぎる!『新しき世界』を見た後にこれを見せられたら興奮すること間違いなし。
『建築学概論』のチョ・ジョンソク、『10人の泥棒たち』のキム・ヘスらも好演。
『her 世界でひとつの彼女』★★★☆
テレセクで愛を確かめ合うのだろうなと考えながら見ていたら本当にやり始めて笑った。
元妻が離婚届にサインをしている姿を見つめるホアキンの表情、思い出す元妻との思い出、あのシーンは反則。
チンタラと話が進んで行く様にはガッカリ。
■C
『超高速!参勤交代』★★★☆
予告編からは読み取ることが出来ない真面目な作りに脅かされた。笑いのバランスも巧妙で、飽きずに最後まで見ることが出来る。
知念侑李は弓の名手として動きを固定するよりも、刀を握らせてアクロバティックな動きをさせた方が良かったのでは。
『青天の霹靂』★★★☆
100分以内でまとめられた物語には満足し、「監督劇団ひとり」という事で驚かされることが多々あり。
柴咲コウを映すシーンは明るく照明を焚き、美しく見せるなんてのも良い。
オーディションを受けて確かな手応えを感じた二人が、光差す方向へと進むあと一歩の所で(地下道から階段を登っている)、悦子が倒れたという報を受ける。このシーンは特に良かった。
でも、元の時間に戻るまでのまとめ方がイマイチだった。
全体的に”映画”という雰囲気がビンビン出すぎている気もするが、それが良いとすら感じてくる。
劇団ひとりの次回作に期待。
『とらわれて夏』★★★
フランクの過去をヘンリーの未来だと思い込んで最後まで見ていた。なぜ時代が逆行しているんだ・・・と悩んでしまった。
これはヘンリー(少年)視点で描かれているってのに、挿入されるのはフランクの過去。うーむ。
『300 帝国の進撃』★★★
セックスシーンに既視感がある。それは『バキSAGA』だ。
そのセックスシーンで、エヴァ・グリーンに乳を出されても何とも思わないんすよ。既に無修正全裸を披露しているんですもの。
アクションシーンはゲーム画面そのもの。3D効果による過剰な血飛沫なんかもプラス効果として働く。
サラミスの海戦における「乗馬~剣を構える」の長回し中に、ズームアップによってエヴァ・グリーンを捉える部分では、ゲームにおける「ボス」をロックした気分を味わえる。
『X-MEN フューチャー&パスト』★★★
シリーズ未見お断りという点がとても残念ではあるが、それを承知のうえで見る分には満足できる。
マイノリティの確立云々はブライアン・シンガーらしいけど、そんなことはどうでもいい。
この映画に見せ場はあったのかと考えだすと、それは皆無に思えてくる。
8mm映像による現実とのリンクは面白いが、アクション面、その他諸々・・・マシュー・ヴォーンの方が明らかに上手でした。作品自体は楽しかったけど。
『ラストミッション』★★☆
これは父が娘に自転車の乗り方を教える映画!いわゆる「自転車映画」だ!
かつて助演女優賞にノミネートされたヘイリー・スタインフェルドを拝めただけでも楽しかったし、天才マックGの新作ってことでも楽しめた。
「マックG監督作品」として宣伝されるんだからマックGはやばい。「製作◯◯」と宣伝されてしまう監督とは天と地の差だ。
■D
『2つ目の窓』★★☆
『殯の森』を見た後に今作を鑑賞。二本しか見ていないが、河瀨直美との相性は最悪に近い。
『ザ・ホスト 美しき侵略者』★★☆
今作も出落ち感がパない。生きることと物語の設定がピッタリとハマれていない。
某漫画家の嫌いな言葉の一つが「過去の栄光にこだわっている」だ。アンドリュー・ニコルに対して言いたくなってしまった。
それでも今後も彼がSF作品を撮るようなことがあれば見に行ってしまうのだろう。
『渇き。』★☆
役所広司の「クソが!」「ぶっ殺してやる!」連発は、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』での「FUCK!」を思い出す。
全体的に暑っ苦しい画面だし、何よりもフィルムグレインがかかっているのが気に入らない。
それでも全シーン見入ってしまっていたのは何故なのだろう。CMディレクターであった中島哲也の腕前なのだろうか。
小松菜奈は前髪があれば可愛い。
『ノア 約束の舟』★☆
IMAX補正で迫力あるシーンこそは楽しく見れたが、それ以外はトホホ。
後半の魅せ方はダーレン・アロノフスキーかなと感じるものの、面白くはない。トホホ。
■E
『トランセンデンス』★
レベッカ・ホールは『プレステージ』の時もだが、演技が大袈裟に感じてしまい、何だか鼻に付く。いかにも「演じています」というのが伝わってくる。
ほぼ全ての要素が面白くないと感じてしまったため、ワースト候補入り。
ナノマシンによる治癒ってのは『∀ガンダム』で既にやっているんですよ
『MONSTERZ』☆
大雨が降っている。その雨が屋内の壁に影となって映される。子供の手に渡される『AKIRA(フィルムコミック)』。目視不可能な位置から頭を出す黒い傘。
冒頭のこれらの要素で引きこまれた。
螺旋階段はDNAを表し、突然変異した二人の戦いの結末を描く場としてはピッタリな場所である。螺旋階段の手すりが壊れるのは染色体数の変化を描いていたのではないだろうか。
藤原竜也(役名謎)は『AKIRA(フィルムコミック』の第一巻だけを読み続けている。
恐らく、同じ超能力を持つ鉄雄に共感しているが、一巻しか読んでいないので崩壊していく様を知らないのではないかなと思う。フィルムコミック一巻がどこまで掲載されているのか不明だが。
石原さとみの演技も鼻に付く。
(6月1日~6月30日)